「へぇ〜、これが有名な井戸か〜〜」
「誰だ貴様! この井戸はハルコの者と我等ボルカノ様の命を授かった者が共同管理する井戸! 部外者が勝手に近付くんじゃない!」
興味本位で井戸に近付いたユキトを、ケイスケの部下は一蹴しようとした。
「これは失礼。名乗るのが遅れた。俺はトルネードだ」
「ト、トルネード殿でありますか!?」
ユキトが自分の通り名を語った途端、部下の顔が一変した。
「いやあ、まさかトルネード殿とこのような所で逢えるとは! 王……いえ、ボルカノ様とはもうお会いになられましたか?」
「ああ。それでボルカノからアンタを呼んで来るように頼まれてな。ここは俺が見張っているからアンタはボルカノの元へ行ってくれ」
「はっ、かしこまりました」
ユキトの言伝を鵜呑みにし、ケイスケの部下は井戸を後にしたのだった。
「お勤めご苦労様です」
「あっ、これはミスズちゃん」
「疲れていると思ったからジュース持って来たよ」
「あっ、自分は遠慮しておきます……」
「そう? 美味しいのに……」
と、ミスズは井戸を監視しているハルコの弟子が遠慮したことから、残念そうな顔で手に持ったジュースを飲み始めた。
ミスズが持って来たジュースは、ストロベリーをゲル状に固めたジュースで、当のミスズは大好物なのだが、他の弟子達は口に合わないと誰も飲もうとはしなかった。
「そうそう。お母さんが用があるって呼んでたよ」
「ハルコ様が?」
「うん。ここはわたしが見ておくからお母さんの所に行ってあげて」
「はっ、かしこまりました」
ミスズの言伝を鵜呑みにし、ハルコの弟子は井戸を後にしたのだった。
「ふう。作戦通りいったな」
「うん。ここまで上手くいくとは思わなかったよ。ミスズちん、びっくり」
当初の計画通り、双方の見張りを退くことに成功し、ユキトとミスズはほっと一息付いたのだった。
「さて、見張りが帰って来ない内に井戸の中へ入るぞ!」
「うん! 頑張ろう、ユキトさん!」
|
SaGa−29「死者の井戸」
モウゼスの中心部に位置する死者の井戸。嘗て死人をその井戸へ投げ捨てていたことから死者の井戸の名で呼ばれている。
死者の井戸には聖王以前の時代より魔王の盾が安置されていると伝えられている。されているというのは、井戸を不気味がり誰も本当に魔王の盾が安置されているかを確認しようとしないからだ。
過去に幾度か井戸に挑戦した者はいたが、井戸の奥から帰って来た者はいなかった。それだけに聖王遺物を各地で強奪している神王教団さえ、死者の井戸の魔王の盾には手を出そうとしなかった。
「地を這う棘よ、その切っ先にてかの者等の動きを封じん! ソーンバインド!!」
ユキトは蒼龍術ソーンバインドで作り出した魔法の刺を井戸の底まで垂らし、自ら刺を伝って井戸の底へと降りたのだった。
「へぇ〜、ソーンバインドって、こんな使い方も出来るんだ〜〜」
「感心してないでお前も早く降りろ」
「うん」
ユキトに続き、ミスズが井戸の底へと降りた。
「ミスズ、ランプはちゃんと持って来たな?」
「うん。バッチリだよ」
「じゃあ行くぞ」
「……」
いざ井戸の奥へ足を踏み入れようとしたら、何故かミスズは沈黙し、足を動かそうとしなかった。
「どうした? ミスズ?」
「にはは。死者の井戸っていうくらいだからオバケとか出るのかなぁ〜って想像したら、足がすくんじゃって……」
そうミスズは苦笑するのだった。
「ったく、幽霊が怖いなら付いて来るんじゃない……」
「がお……。でも幽霊は怖いけど、ユキトさんと一緒にいたいから……」
「分かった分かった。ランプはお前が持て。何かあったらミスズは俺が守る」
「分かったよ。ありがとう、ユキトさん」
こうして改めて、二人は死者の井戸の奥へと挑んで行くのだった。
|
「う〜ん……。暗くてじめじめしてて、本当にオバケが出て来そう……」
ランプの明かりのみを頼りに井戸の奥へと進む二人。入り口から数十歩歩いた先は既に日の光が届かず、また湿気も多く、余計に不気味さを醸し出していた。
「ッ……!」
暫く歩くと、突然ユキトが足を止めた。
「どうしたのユキトさん? もしかして、オバケ……!?」
「いや、その方がマシだったかな……」
ユキトが剣を構えて間もなく、ゾンビ系モンスター屍人が巨大な鎌を抱えて襲い掛かって来た!
「ウリィィィィィ!!」
「わっ、モンスター!?」
「十文字斬り!!」
「ウゲァッ!」
いきなり襲い掛かって来た屍人に驚くミスズを尻目に、ユキトは剣技十文字斬りで屍人を一掃したのだった。
「大丈夫か、ミスズ」
「うん。わたしは大丈夫。でも、こんな所にモンスターがいるなんて……」
「アビスの力は強まっているし、何より魔王の盾なんていわく付きの物が安置されているんだ。モンスターの巣窟になっていたって不思議じゃない。
恐らくコイツは序の口だ。この奥には更に凶悪なモンスターが蠢いているに違いない」
「がお……。確かにオバケの方がマシかも……」
その後も奥へ進む毎にいくつかの戦闘を繰り返した。死者の井戸に生息しているモンスターは、骸骨系、ゾンビ系、亡霊系の3種類であった。
これらのモンスターを大別して、一般的にはアンデット系モンスターと言われている。ゾンビ系は物理攻撃にもろいが、亡霊系は強いなどの違いはあるが、朱鳥術に弱いという共通点がある。
「デミルーンエコー!!」
「ギィャァァァッ!」
空中を飛来しながら襲い掛かって来る骸骨系モンスターフリスベルグを、ユキトは曲刀固有技デミルーンエコーで撃退したのだった。
「先を急ぐぞ、ミスズ」
「うん……」
ユキトに返事をしたミスズの心境は複雑だった。ユキトさんは強いし頼り甲斐があるし、何よりわたしを守ってくれる。それはとっても嬉しい。
けどわたしは守られてばかり。ユキトさんの足手まといにはなりたくない。でも今の自分は何の役にも立っていない。これだと自分がいない方がかえって効率が良かったのではないかと、ミスズは思い悩んでいた。
(ううん、こんな所でめげない。ミスズちん、ファイト!)
そうミスズは自分の心に言い聞かせながら、奥へと進んで行くのだった。
|
「ねえ、ユキトさん。さっきから空気が重苦しくなって来てない?」
「ああ、確かに」
迫り来るモンスターをなぎ払いながら井戸の奥へと進む二人。光の届かない死者の井戸の空気は、ただでさえ重苦しさを感じられずにはいられなかったが、その空気がより重苦しくなって来ているのを、二人は肌で実感していた。
「ユキトさん、あれ!」
光りの届かない井戸の奥に人影らしきものを見たミスズは、ユキトに呼び掛けながら人影の方を指差したのだった。
「こいつは……」
人影らしきものにランプの光りを当てると、浮かび上がって来たのは一見死後何年も経ったかの様な人骨だった。
「もしかして、わたし達より前に魔王の盾を取りに来て、死んじゃった人かな?」
「いや、そんな生易しいものではないようだ……」
「ワタサヌ……タテハワタサヌ……」
ガキィ、ガキィィン!
ユキトが身構えた瞬間、人骨らしき者が呻き声を上げたかと思えば、突然蒼龍術ウインドダートを唱えて来た。
「くっ!」
ユキトはいきなりの攻撃に驚きながらも、ファルシオンでダートを弾き飛ばしたのだった。
「ユキトさん!」
「大丈夫だ。恐らくこいつは死者の井戸に入ったはいいが、魔王の盾を取れ切れずに死に、亡霊系モンスターと化したものだ。似たようなモンスターにタオマスターというのがいるが、こいつはデスマスターと呼んだ方が相応しいな」
「がおっ……」
「しかも、俺と同じ蒼龍術使いのようだ。これは迂闊に蒼龍術は使えないな。だがっ!」
例え術が使えなくとも、自分には剣技がある。そう心に呼び掛けながら、ユキトはデスマスターに立ち向かっていたのだった。
「速攻でカタを着ける! 十文字斬り!!」
シュルルル!
「何っ!?」
デスマスターに斬りかかろうとした瞬間、突然ユキトの身体に何かが巻き付いて来た!
「ユキトさん!」
「こいつは、屍眼!」
ユキトに巻き付いて来たものは、亡霊系モンスター屍眼だった。
「ワタサヌ……ワタサヌ……」
デスマスターが呻き声をあげると、それに呼応するかの様に、次々に亡霊系モンスターが集まり出して来るのだった。
「がおっ、モンスターがいっぱい……。でも怖がってなんかいられない。わたしも頑張らなきゃ!」
亡霊系モンスターは正直怖い。でもそんなことをいっていたらいつまでもユキトさんの足手まといになるだけ。だから怖がらずにわたしも頑張らなきゃいけない。そう恐怖心を克服する様に、ミスズは術を唱え出すのだった。
「大地に大いなる恵みをもたらす雨よ、その恵みの柱を鋭利な矛先へと姿を変え、我に襲い掛かる者に裁きの一撃を与えたまえ! スコール!!」
「ギァアッ!」
ミスズの唱えた玄武術スコールの強い酸性の雨が、井戸の中へと降り注ぐ。酸性の雨が身体全体に染み渡った屍眼はもがき苦しみ、ユキトから離れたのだった。
「助かったぜ。サンキュー、ミスズ」
「ううん。ユキトさんのお役に立ててわたしも嬉しい。にはは」
「しかしこう数が多くては、一体一体倒すってワケにもいかなそうだな。こうなればっ! デミルーンエコー!!」
一体一体倒すのでは埒があかないと思ったユキトは、曲刀固有技デミルーンエコーで複数の敵を斬り払おうとしたのだった。
カキ! カキ! カキ! カキィィィン!!
「グウウ〜〜! ワタサヌ、ワタサヌ!!」
ユキトの放ったデミルーンエコーは多くのモンスターを打ち倒すことは出来たが、肝心のデスマスターを倒すまでには至らなかった。
「くっ、亡霊モンスターのくせになかなかしぶとい奴だ!」
「ワタサヌ! マオウノタテハワタサヌ!!」
デスマスターは喘ぎ声をあげ、再び多くのモンスターを呼び寄せたのだった。
「ユキトさん、これじゃキリがないよ!」
「ああ。こうなったら強力な術で全部まとめてぶっ飛ばすしかない!」
「強力な術って言われても、わたし、サンダークラップは扱えない……」
「そうか。俺のトルネードは効きそうにないしな。どうする……」
強力な術を唱えるというのは妙案だが、肝心の強力な術が思い付かない。ミスズがサンダークラップを唱えられず、俺のトルネードも駄目だとなると手がないと、ユキトは悩むのだった。
「いや……。あの術ならもしかしたら!」
「ユキトさん、何か思い付いたの?」
「ああ。蒼龍と玄武の合成術召雷ならいけるかもしれない!」
「合成術!? でもサンダークラップも唱えられないわたしの力じゃ無理だよ!」
「大丈夫だ。お前一人で唱えるんじゃない。俺とミスズ二人の力で唱えるんだ。必ず成功する!」
「うん! わたし頑張るよ! ユキトさんと一緒にデスマスターを倒すよ!!」
「よし、いくぞ!!」
ユキトとミスズは互いに手を重ね合わせ、蒼龍と玄武の合成術召雷の詠唱に入ったのだった。
『水を守護せし玄武よ! 風を守護せし蒼龍よ! 今水風の力合わせ、我等に立ちはだかる者に天空より招かれし迅雷の洗礼を浴びせさせたまえ! 召雷!!』
ゴゴゴゴゴゴゴ……ビシャァッ!!
「ワタサヌ、ワタサヌ……グアァァァ〜〜!!」
サンダークラップを遥かに超越した合成術召雷は、周囲のモンスターを巻き込みながらデスマスターに致命傷を与えたのだった。こうしてユキトとミスズは二人の力を合わせることにより、見事デスマスターを倒したのだった。
|
「ユキトさん、これ……」
「ああ。間違いないな」
デスマスターの後方に掲げられていた盾。重厚で闇より暗い装飾を施された盾。その形は正しく魔王の盾と言うに相応しい物だった。
「魔王の盾っていう位だから、やっぱり曰く付きの物なのかな? 装備すると二度と手から離れなくなるとか」
「伝説では、装備する者の魔力を著しく増大させると言われているが、果たしてどうか……」
魔王の盾と言われる位だから、ミスズの言うように何かしらの負荷があるかもしれない。用心するに越したことはないと、ユキトは恐る恐る魔王の盾を手にしようとした。
ゴ……ゴゴゴ……
「ッ!?」
すると、驚くべきことに魔王の盾は自らが意思を持っていかの如く動き出し、ユキトの左手に装備されたのだった。
「がおっ、何だか怖いよぉ……」
ひょっとしたら魔王の怨念か何かが盾を動かしているのではないかと、ミスズは怖がるのだった。
「恐らく俺の魔力に反応したと思うんだが、しかし……」
やはり意思を持っているかの如く動くのは不気味だ。こんな盾は使わない方がいいのだろうが、この場に安置し続けていては問題の解決には至らない。どんな曰く付きの物であれ、今は持ち出す以外に選択肢はないのだとユキトは思ったのだった。
「ねえ、ユキトさん。盾も無事手に入れられたんだから、こんなトコ早く後にしようよ!」
「ああ、そうだな。こんな所に長居は無用だ」
|
「ねえ、ユキトさん。外の方、騒がしくない?」
「ああ。恐らく俺達が見張りの兵を騙したことがバレて、一悶着起きてるんだろ」
井戸の入り口が近付いて来るに連れ、喧騒と言うか、まるで戦闘が行なわれているかの様な激しい爆音が聞こえて来た。恐らく自分達が見張りの兵を騙したことが発端で両者に争いが起きているのだろうとユキトは思ったのだった。
「もしかしたら、お母さんとお父さんがケンカしてるのかもしれない! 早く行かなきゃ!」
「ああ! 地を這う棘よ、その切っ先にてかの者等の動きを封じん! ソーンバインド!!」
ユキトは井戸の入り口に魔法の棘を絡まらせ、地上へと昇って行った。
「まさか、ボルカノの正体がアンタやったとはな、ケイスケ! 姉貴を奪っただけで飽き足らず、今度はウチの商売を邪魔するとはなぁ……。その腐り切った根性だけは認めたるわ!」
「僕は君の商売を邪魔する気はない。僕はただ魔王の盾が欲しいだけだ!」
「あかん! 誰がアンタみたいな甲斐性無しに盾を渡すかアホ! ボルカノの正体がアンタと分かった以上、余計渡す気にならなくなったわ!」
「そうか。なら力尽くで手に入れるしかないようだな!」
「お互い部下は歯が立たんかったようやし、ええ機会や、ここでどちらが腕の立つ魔術士か白黒着けるで!」
「臨む所だ! イクコも認めたエル=ファシル王の実力、ここで披露しよう!」
ユキトとミスズが井戸から帰還した時、ちょうど互いの弟子が敗れ、ハルコとケイスケの直接対決が始まろうとしていた所だった。
「アンタ相手に手を抜く訳にはいかん。本気でいかせてもらうで! 水よ、雷と交わり、我に襲い掛かる者に水雷の脅威を与えたまえ! サンダークラップ!!」
ハルコは本気で唱えた玄武術サンダークラップでケイスケに先制の一撃を与えようとした!
「無駄だ! 炎よ! 我を攻守せし鉄壁となれ! ファイアウォール!!」
しかしハルコの唱えたサンダークラップは、ケイスケの唱えた朱鳥術ファイアウォールによってかき消されたのだった!
「ウチのサンダークラップが効かへん!?」
「フフ、このファイアウォールは通常のファイアウォールじゃない。通常のファイアウォールは防壁の役割しか果たさないけど、僕のファイアウォールは相手を炎で焼き尽くす攻撃の壁となる! 行けっ、ファイアウォール!!」
ハルコのサンダークラップをかき消しても尚ファイアウォールの炎の勢いは衰えを見せず、今度はハルコに向かって行ったのだった。
「ウチのサンダークラップを受け止めたのは素直に誉めたる。せやけど、そないな火の粉、簡単に消したるで! 水よ、我を守りし柱となれ! ウォーターポール!!」
「何っ!?」
しかし、今度はハルコの唱えた玄武術ウォーターポールにより、ケイスケの唱えたファイアウォールがかき消されたのだった。
「流石にやるな、ハルコ……」
「アンタもな。しかしサンダークラップが効かんとなると、あの術を使うしかないようやな……」
「こちらもファイアウォールが効かないとなると、あの術で行くしかない……」
|
「ユ、ユキトさん……」
「ああ。どうやら既に始まっていたようだな。しかし……」
ユキトの見る限り、二人の実力はまったく互角といっても過言ではなかった。そして互角なだけではなく、どちらもそれぞれ世界一と言っても過言ではない玄武術士と、朱鳥術士。例えどちらが勝っても軽傷程度では済まないだろうとユキトはある種の戦慄を覚えるのだった。
「水よ! 海流を巻き込む巨大な渦となり、その玄武の硬き甲羅の如き濁流持て、大いなる大地の全てを飲み込め!」
「何、この詠唱? わたし、知らない」
ハルコが唱えようとしている術。それはハルコから一通り玄武術を習ったミスズでさえ知らない術だった。
「あの術は!?」
「ユキトさん、知ってるの? お母さんが唱えようとしている術?」
「ああ。あの詠唱は間違いなく古代魔法渦潮! 魔王以前の時代に存在し、街一つを飲み込む程の威力を誇ると言われる伝説の術だ!」
「!? お母さん、そんな術をお父さんに唱えようとしているの!?」
「ああ。ハルコは本気の本気でケイスケ王を潰しにかかりたいらしい!」
「へぇ。君がその術を知っているとは意外だねぇ……」
しかし、当のケイスケは古代魔法を目の前にしても至って冷静だった。
「炎よ! 大空を羽ばたきし炎の鳥となり、その朱鳥の大いなる羽ばたきの如き劫火持て、偉大なる大地の全てを焼き尽くせ!」
「この術は!?」
「ユキトさん、もしかして!?」
「ああ。ケイスケ王の唱えようとしている術は古代魔法火の鳥! 渦潮と同じく魔王以前の時代に存在し、街一つを焼き尽くす程の威力を誇ると言われる伝説の術だ!」
絶大な威力を誇る古代魔法渦潮を唱えようとしているハルコに対し、ケイスケもまた、古代魔法火の鳥でハルコに対抗しようとするのだった。
「ユキトさん、このままだと……」
「ああ。どちらも食らえば間違いなく死ぬっ……!」
「!? やだよ、ユキトさん……。わたし、お父さんもお母さんも大好き。二人とも失いたくないよぉっ……!」
(くっ、一体どうする!?)
最善の方法は二人が術を放った瞬間、こちらも術を唱えて二人の術をかき消すことだ。幸い二人は戦いに夢中でこちらには気付いていない。
しかし、二人の唱えようとしている術は、どちらも通常の術を遥かに凌駕する様な術だ。蒼龍術トルネードでさえ、二人の強大な術をかき消せる可能性は極めて低い。
果たして自分の力量で強大な術二つをかき消せるのだろうかと、ユキトは悩むのだった。
「渦潮!!」
「火の鳥!!」
(クッ、悩んでいる暇はない! 今はとにかく二人を止めるしかないんだ!!)
「風よ、我の元に集い全てを吹き飛ばす竜巻となれ! トルネード!!」
迷っている時間はない。例え成功しなくても二人を止めなければならないのだ。そう思い、ユキトは渾身の蒼龍術トルネードを唱えるのだった。
…To Be Continued |
※後書き
一ヶ月所か、二ヶ月以上も間が空いてしまい、続きを楽しみにして下さる方々には大変なご迷惑をおかけ致しました。
さて、今回は「召雷」、「渦潮」、「火の鳥」と、ロマサガ1、2の術を登場させました。合成術の方は3にカッコ良さげな合成術がなかったので、2から引っ張って来た次第です。2では合成術は一人で唱えられるのですが、3では火、水、風、地系統の術はどれか一つしか覚えられないという設定になっております。なので、2の術を3方式で唱えたという感じです。
ちなみに、ロマサガ1の術を持ち出して来たのも似たような理由です。3では玄武はおろか攻撃のイメージの強い朱鳥でさえ、攻撃魔法というよりは補助魔法という感じで、強い攻撃魔法がありませんので。
まあ、渦潮も火の鳥も1000前後のダメージしか与えられない大したことない術だったりするのですが(笑)、その辺りはご愛嬌ということで。ちなみに古代魔法と表現したのは、1の術だからという単純な理由です。
さて、次回でいよいよ「ロマカノ」も30話に突入ですね。連載開始から3年を経てようやく30話という超スロースペースだったりしますが(笑)。
これからの十話はストーリーも大きく動くと思いますので、楽しみにしていて下さいね。
|
SaGa−30へ
戻る